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S-VFR:特別有視界飛行方式とは

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今回の記事では飛行方式の一つである「特別有視界飛行方式」について解説します。

特別有視界飛行方式は、あまり聞き馴染みがないかもしれませんがVFRで飛行するパイロットであれば必ず知っておかなければなりません。

しかし、特別有視界飛行方式に関するルールはかなり複雑で、知識を整理しておく必要があります。

この記事を何度も読んで知識を確実に自分のものにしていってくださいね。

VFRやIFRとの違いを解説した記事もあるので、あわせて読んでみてください。

目次

SVFR:特別有視界飛行方式とは?

特別有視界飛行方式は英語で「SVFR:Special Visual Flight Rules」と言います。VFRに「Special」を付けただけですね。

パイロットは略して「スペブイ」と言ったりします。

「SVFRとは?」と聞かれたら次のような答えになると思います。

SVFR:特別有視界飛行方式とは?

VFR機に対するIMCでの飛行および離着陸の禁止を一定の条件のもとに解除する許可を得て行う飛行方式。

航空法ではどのようになっているのでしょうか?

航空法第94条の但し書きがSVFRに該当します。

(計器気象状態における飛行)

第九十四条 航空機は、計器気象状態においては、航空交通管制区、航空交通管制圏又は航空交通情報圏にあつては計器飛行方式により飛行しなければならず、その他の空域にあつては飛行してはならない。ただし、予測することができない急激な天候の悪化その他のやむを得ない事由がある場合又は国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。

航空法

IMC状況下ではVFRでの飛行が禁止されていますが、その禁止を一定の条件のもと解除してVFRでも飛べるようにするものです。

SVFRは管制圏および情報圏内の飛行に限って許可されます。

SVFRの条件:SVFR Conditions

どんな状況でもSVFRでの飛行ができるわけではありません。

以下の4つの条件を満たす場合のみSVFRでの飛行が可能です。

SVFR Conditions
  1. 雲から離れて飛行すること
  2. 飛行視程を1,500m以上に維持して飛行すること
  3. 地表または水面を引き続き視認できる状態で飛行すること
  4. 管制機関と常時連絡を保つこと

実際にSVFRの許可が出される時も「Maintain SVFR conditions」と管制官から必ず言われます。

これは「4つの条件を守れ」という意味です。

航空法施行規則第198条の4に記載されています。

(法第九十四条ただし書の規定による許可を受けて管制圏等を飛行する場合の飛行の方法)

第百九十八条の四 航空機は、法第九十四条ただし書の規定による許可を受けて管制圏(特別管制空域を除く。)又は情報圏を飛行するときは、次の各号に掲げる基準に従つて飛行しなければならない。ただし、当該許可に際しこれらの基準と異なる条件が付されたときは、この限りでない。

 雲から離れて飛行すること。

 飛行視程を千五百メートル以上に維持して飛行すること。

 地表又は水面を引き続き視認できる状態で飛行すること。

 情報圏を飛行する場合又は法第九十六条第六項の告示で指定する時間において管制圏を飛行する場合にあつては、当該情報圏又は当該管制圏における航空交通情報の提供に関する業務を行う機関を経由して、当該情報圏又は当該管制圏における飛行について法第九十四条ただし書の規定による許可を行う機関と常時連絡を保つこと。

航空法施行規則

SVFRでできること

SVFRは管制圏および情報圏に関わる飛行にのみ許可が出されます。

SVFRはVFR機が急な天候悪化に見舞われたときの「救済措置」のような意味合いもあるので、なんでもできるという訳ではありません。

SVFRでできること

■管制圏又は情報圏内にある飛行場や場外離着陸場からの離陸
■管制圏又は情報圏の通過
■管制圏又は情報圏への進入
■管制圏又は情報圏内にある飛行場や場外離着陸場への着陸
■離陸後にVMCへの上昇(地上視程のみがIMCの場合)
■管制圏において限られた時間内で飛行場周辺のみのローカル飛行

管制圏内又は情報圏内にある場外離着陸場から離陸し圏外に出る場合や圏外から管制圏内又は情報圏内の場外離着陸場に着陸する航空機は「通過機」扱いとなります。

したがって場外離着陸場に関しては、離着陸の許可は必要なく管制圏では通過の許可をもらい、情報圏では事前に連絡(位置通報)をします。

なので管制圏内の場外離着陸場ではSVFRの要求をするときに、離着陸許可の要求ではなく通過許可の要求(情報圏では連絡)を行います。

管制圏・情報圏での飛行の可否を表にまとめています。

管制圏内の飛行

飛行場空中飛行の可否
VMCVMC離着陸可
通過の許可を得て、VFRで通過する
IMC(SVFR Conditions)離着陸可
S-VFRと通過の許可を得て通過する
IMC
地上視程1500m以上
VMCS-VFRで離着陸可
通過の許可を得てVFRで通過する
IMC(SVFR Conditions)S-VFRで離着陸可
通過の許可を得てS-VFRで通過する
IMC
地上視程1500m未満
VMC離着陸はできないが、通過の許可を得てVFRで通過する
IMC離着陸不可
通過の許可も得られないので飛行することができない
管制圏内の飛行

情報圏内の飛行

飛行場空中飛行の可否
VMCVMC離着陸可
連絡(位置通報)を行って、VFRで通過する
IMC(SVFR Conditions)離着陸可
S-VFRと通過の許可を得て通過する
IMC
地上視程1500m以上
VMCS-VFRの許可を得て離着陸可
連絡(位置通報)を行って、VFRで通過する
IMC(SVFR Conditions)S-VFRの許可を得て離着陸と飛行が可
連絡(位置通報)を行って、S-VFRで通過する
IMC
地上視程1500m未満
VMC離着陸は不可だが飛行は可
連絡(位置通報)を行って、VFRで通過する
IMC離着陸不可
S-VFRが許可されないので、飛行することができない
情報圏内の飛行

SVFRの管制用語

SVFRの管制用語は少し複雑に感じられるかもしれません。

また日常的に行うものでもないので忘れてしまいがちですが、いざという時のためにしっかり覚えておきましょう。

パイロットと管制官の交信例があるので参考にしてみてください。

VMCへの上昇

・飛行場の指定のみがVMCを満たさない場合で、離陸後VMCに到達するまでSVFRによる上昇を行う場合

ATC:Climb to VMC within control zone 5 miles from 〇〇 airport, maintain special VFR conditions until reaching VMC.

管制圏内でVMCに到達できるときにSVFRによる上昇ができます。

離陸

・SVFRによって飛行場から離陸し、管制圏又は情報圏外に出域する場合
・SVFRによって飛行場から離陸し、管制圏又は情報圏内にある場外離着陸場に着陸する場合

PILOT:request special VFR departure to northwest.

ATC: cleared to leave control zone 5 miles northwest of 〇〇airport, maintain special VFR conditions while in control zone.

このクリアランスによりSVFRで管制圏を北西方向に出域することが許可されましたが、これに離陸許可は含まれていません。

「離陸許可」を別途もらうことを忘れないようにしましょう。

着陸

・管制圏又は情報圏外からVFRで飛行し、SVFRで飛行場に着陸しようとする場合
・管制圏/情報圏内にある場外離着陸場をSVFRによって出発し、当該管制圏/情報圏の飛行場に着陸する場合

PILOT:request special VFR landing.

ATC: cleared to enter control zone 5 miles west of 〇〇 airport, maintain special VFR conditions while in control zone, report downwind.

このクリアランスも入域を許可しているだけなので「着陸許可」を別にもらう必要があります。

通過

・管制圏又は情報圏をSVFRによって通過しようとする場合
・管制圏情報圏内の場外離着陸場からSVFRによって離陸して管制圏情報圏外へ出域する場合
・管制圏情報圏外からSVFRによって入域して管制圏情報圏内の場外離着陸場に着陸する場合

PILOT:request special VFR cross control zone.

ATC: cleared to cross control zone, maintain special VFR conditions while in control zone.

場外離着陸場の離着陸は「enter」や「leave」のような用語をイメージしますが通過機と同じ扱いで「cross」の用語が使われます。

場外離着陸場については離着陸の許可は必要としないので通過の許可を得られた時点で離陸もしくは着陸ができます。

ローカル飛行

・管制圏内においてSVFRにより飛行場の周辺のみを限られた時間でローカル飛行する場合(連続離着陸の訓練等)

ATC:local special VFR operations in the immediate vicinity of 〇〇 airport are authorized until 〇〇(時間), maintain special VFR conditions.

このクリアランスにより同じ飛行場である時刻までの連続離着陸等が可能になります。

SVFRの注意点

管制方式基準ではSVFRについて以下のようになっています。

(1)a 管制区管制所等は、管制圏又は情報圏が指定されている飛行場における地上視程(同一管制圏内に2以上の飛行場がある場合は、当該管制圏の中心となっている飛行場の地上視程)が1,500メートル以上ある場合であって、航空機から管制圏又は情報圏における特別有視界飛行方式による飛行の許可を求められたときは、航空交通の状況を考慮してこれを許可することができる。
ただし、情報圏内においては、1機のみの飛行の許可を行うものとする。
なお、管制圏内における飛行の許可があった場合は、飛行場管制所は、当該許可の条件内で飛行場及びその周辺における当該機の管制を行うものとする。

b IFR機との関連
(a) 特別有視界飛行方式による飛行は、原則としてIFR機の航行に支障がない場合に許可するものとする
(b) IFR機のため特別有視界飛行方式による飛行を許可できない場合は、当該機に対し可能な限り遅延に関する情報を通報するものとする。
★〔数値〕分間待って下さい。 EXPECT〔number〕MINUTES DELAY.

管制方式基準

SVFRの許可は管制圏には制限がありませんが、情報圏については1機までになります。

IFR機との関連

SVFR機はIFR機と同様に管制間隔が設定されます。

そのためIFR機の航行に支障が出る場合はSVFRの許可は出ません。

そしてIFR機のためにSVFRの許可が速やかに出せない場合は遅延に関する情報が提供されます。

地上視程が1500m未満になった場合

地上視程が1500m未満になった場合はSVFRの条件を満たしません。

出発機に対してはSVFRの許可は発出されません。

管制圏又は情報圏外を飛行中の到着機に対しても、緊急状態でない限りはSVFRによる着陸は許可されません。

管制圏又は情報圏内を飛行中の到着機に対しては、飛行視程1500m以上を維持して管制圏又は情報圏外に離脱ができる場合は離脱が指示されます。

そうでない場合、もしくは緊急状態の場合はトラフィックの状況が許す限りSVFRによる着陸が許可されます。

SVFRは簡単ではない

何度も言いますがSVFRは天候急変に見舞われたVFR機の「救済措置」的な意味合いがあります。

決して「積極的にSVFRを使いましょう」とい話ではありません。

飛行視程1500mで飛んでいる状況を想像してみましょう。少し先は真っ白で何も見えないような状態です。

実機やシュミレーターで実際に経験された方はわかると思いますが、飛行視程1500mは結構怖いです。

計器飛行証明の資格を持っているパイロットであれば、落ち着いて対処できるかもしれませんがそうでない場合は慎重になったほうがいいと思います。

あくまで最終手段だと思ってSVFRと付き合うようにしましょう。

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