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ヘリコプターのためのパッセンジャーブリーフィング

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乗客を乗せてフライトする際には必ず「パッセンジャーブリーフィング」行わなければなりません。

これは特にヘリコプターに精通していない乗客を乗せて、安全にフライトを行うためには非常に重要です。

パッセンジャーブリーフィングのやり方は組織によっても様々ですが、乗客の安全を守るのは機長であるあなたの責任です。

パッセンジャーブリーフィングをの目的やどのようなことを話せばいいのかこの記事を読んで確認しておきましょう。

目次

なぜパッセンジャーブリーフィングは必要なのか?

パッセンジャーブリーフィングの目的についてまずは考えていきましょう。

パッセンジャーブリーフィングの目的

乗客に対し、ヘリコプターの危険個所や機内での立ち振る舞い、緊急事態の対処方法などを説明し安全で効率的なフライトを促進すること。

簡単に言ってしまえば「乗客の安全を確保すること」が第一の目的です。

そのためには、ヘリコプターにどのような潜在的なリスクがあるのかをよく説明しておく必要があります。

ヘリコプターに乗るということは多くの人にとっては非日常的な出来事で、不安を感じる乗客も少なからず存在します。

特に緊急事態の対処方法などは、事前に説明しておかないと乗客はパニックに陥りスムーズに行動することができなくなってしまいます。

例えヘリコプター乗ったことのある乗客であっても、フライト前には再度パッセンジャーブリーフィングを実施しましょう。

パッセンジャーブリーフィングに含めるべき項目

パイロットや乗客、機種によって内容は変わることは当然の事です。

ここではヘリコプターのパッセンジャーブリーフィングをする際に、最低限これだけは含めるべき項目について解説していきます。

パッセンジャーブリーフィングに含めるべき項目
  1. ヘリコプターへの近づき方
  2. ヘリコプターの後方には近づかない
  3. シートベルトの着用
  4. 機内は禁煙
  5. 操縦装置やスイッチなどは触らない、その周辺に物を置かない
  6. 緊急脱出
  7. 救命胴衣の使い方
  8. ステライルコックピットルール
  9. 気分が悪いと感じた時
  10. 着陸後
  11. 質問タイム

それぞれ一つずつ詳しく見ていきましょう。

①ヘリコプターへの近づき方

これはヘリコプターのパッセンジャーブリーフィングの中で最も重要なことだと思います。

乗客をヘリコプターに乗せるタイミングとしては、ローターが回っているの状態か止まっている状態かに分かれますが、ここではローターが回っている状態で乗客を乗せると想定します。

乗客に伝えるべきことは「ヘリコプターに近づくときはヘリコプターの横もしくは前から近づく」ということ、そして「頭は低く抑えて手を上げたりしない」ということです。ハイタッチなんかは絶対にダメです。

また小さいな子供がいる場合はその保護者に対して「しっかりと手をつなぐか、肩よりも低い位置で子供を抱く」ように指示しましょう。

メインローターの位置が意外にも低いことはパイロットであれば知っていますが、多くの乗客は知らないでしょう。

メインローターとの衝突による事故を防ぐために必ずパッセンジャーブリーフィングで乗客に説明しましょう。

②ヘリコプターの後方には近づかない

ヘリコプターの後方にはテールローターがあり、多くの場合簡単に手の届く位置にあります。

小型のヘリコプターの場合はちょうど頭の位置ぐらいにテールローターがあることが多いです。

テールローターが回転している場合、ほとんどそれを視認することはできないため非常に危険です。

テールローターの存在に気づく前に衝突してしまいます。

またテールローターだけでなく、エンジンからの高温の排気ガスも、通常機体の後方へ流れていくようになっています。

高温の排気ガスによって乗客が火傷を負ってしまうリスクもあります。

このようにヘリコプターの後方には特に危険要素が多く存在しています。

何があってもヘリコプターの後方には近づかないよう乗客に説明しましょう。

③シートベルトの着用

ほとんどのヘリコプターは飛行機とは違って機内で立ち上がることはありません。残念ながらトイレもないので。

そのため乗客にはフライト中は常時シートをベルトを着用するように指示します。

またシートベルトの使い方(付け方、締め付け方、外し方)を説明しましょう。

これは緊急脱出が必要になった際は乗客自身でシートベルトを外す必要があるからです。

機体によって装備されているシートベルトの種類は様々なので、例えヘリコプターに慣れている乗客であってもしっかりと説明しましょう。

④機内は禁煙

機内での喫煙は禁止されています。昔は吸っていたそうですが今では信じられないですよね。

その名残として機内に灰皿があるヘリコプターもあります。

しかしタバコの火が原因で火災につがるリスクがあります。

乗客の安全そして健康のためにも機内は禁煙である旨を伝えましょう。

⑤操縦装置やスイッチなどは触らない、その周辺に物を置かない

これは特に前方の座席に座る乗客に対して説明します。

乗客を前席に乗せる場合、サイクリックやコレクティブなどの操縦装置は外しておくべきですが、そうでないない場合は特に注意が必要です。

操縦装置の周辺に物を置かれると、それが原因でコントロールが効かなくなることもありえます。

地面近くを飛行している場合はそれが致命的なものになります。

また好奇心旺盛な乗客は操縦装置やスイッチなどを触ってみたくなるかもしれません。

乗客そして自分(パイロット)の安全を確保するためにも絶対にそれらには触らないように指示しましょう。

⑥緊急脱出

できれば考えたくはありませんが、フライト中に何が起こるかは誰にもわかりません。

緊急脱出についても説明しておく必要があります。

エアラインの航空機のように客室乗務員がいれば乗客は援助を求めることができますが、ヘリコプターには残念ながら客室乗務員はいません。

緊急脱出が必要になった場合は、機長の指示のもと乗客自身で機体の外に出てもらう必要があります。

そのため通常のドアの開け方と非常ドアの開け方について説明しておく必要があります。

余裕があれば、通常のドアの開け方は乗客に練習させてもいいかもしれません。

私たちができることは唯一「備える」ことです。最善を望み最悪に備えましょう。

⑦救命胴衣の使い方

これは海上などを飛ぶ場合に限られますが、乗客には救命胴衣の使い方について説明しておきましょう。

水上へ緊急着陸をした場合、救命胴衣は命を守るために必要不可欠な装備です。

そして乗客は自分自身で救命胴衣を装着する必要があります。使い方を知らなかったから溺れましたでは、せっかくの装備が意味のないものになってしまいます。

救命胴衣の使用が予想されるフライトでは必ず説明しましょう。写真や動画などがあればそれらを使って説明した方がイメージはつきやすいと思います。

⑧ステライルコックピートルール(Sterile Cockpit Rule)

「ステライルコックピットルール」という言葉を知っていますか?

ステライルとは「無菌」という意味ですが、ここではコックピットの衛生状態の話ではありません。まあ衛生的な方がもちろんいいのですが。

ステライルコックピットルールを簡単に説明すると、飛行中に不必要な会話や活動を避けて、飛行中のタスクに集中できるようにするというものです。

特に離着陸などのフェーズではパイロットのワークロードも大きいため、不必要な会話などによって注意力が散漫になり、管制指示の聞き逃しや手順の抜けなどが起こりえます。

ヘリコプターはコックピットと客室の隔たりがないため、乗客にもこれに協力してもらう必要があります。

「ステライルコックピットルール」の言葉を使う必要はありませんが、タクシー中や離着陸中などはできるだけ会話を慎んでもらうように説明しましょう。

⑨気分が悪いと感じた時

ヘリコプターは飛行機に比べて振動や騒音レベルが大きいため、人によってはそれだけで気分が悪くなることもあります。

またヘリコプターの動きや気流による揺れなどの影響で乗客が気分が悪くなることもあるでしょう。

乗客には気分が悪くなったらすぐにパイロットにそのことを伝えるように説明しましょう。

乗客の気分が悪い状態で飛行を続けても状況は悪くなるだけです。

また気分が悪くてもそれを伝えることをためらってしまう乗客もいるので、パイロットが伝えやすい環境を作ることも大切です。

飛行中も適宜、乗客に対して気分はどうかと聞いてあげるとなおいいですね。

⑩着陸後

フライトを終えて一息つきたいところですが、乗客が降りてヘリコプターから離れるまでは油断してはいけません。

フライトの前に着陸後の話をしておけば乗客もスムーズに動くことができます。

地上スタッフがドアを開けるまではシートベルトを着用したまま待ってもらいましょう。

そしてヘリコプターから離れるときは機体の横もしくは前から離れ、決して後方には近づかないことを説明します。近づく時と一緒ですね。ハイタッチは禁止です。

⑪質問タイム

ブリーフィングの最後には乗客に対して質問があるかを確認しましょう。

そしてフライト中でも何か不安なことがある場合は、遠慮なくパイロットやスタッフに声を掛けていいことを伝えておきましょう。

パッセンジャーブリーフィングの例

以上の項目を踏まえて実際にパッセンジャーブリーフィングを行う際の例を紹介します。

私も実際に普段こんな感じでパッセンジャーブリーフィングを行っています。

フライトの内容や機種によって言うべきことは当然変わってくるので、これが正解とは言えませんが参考になれば幸いです。

パッセンジャーブリーフィングの例

本日はお越しいただきありがとうございます。機長のアンポンタンです。

フライトに先立ってお客さんの安全のためにパッセンジャーブリーフィングを行います。

まずはヘリコプターに近づく際ですが、スタッフの指示に従うこと、そしてヘリコプターの横もしくは前方から近づくようにしてください。

ヘリコプターの後方にはテールローターがあり非常に危険です。何があってもヘリコプターの後方には近づかないようにしてください。

また飛行中は常時シートベルトの着用をお願いします。緩みのないようにしっかりと閉めてください。

機内は禁煙です。タバコを吸いたくなってもヘリコプターを降りるまでは我慢してくださいね。

前席に座るお客さんは操縦装置や飛行計器、スイッチ類が近くにありますので、それらの近くに物を置いたり触れたりしないようにしてください。

本日のフライトは何事もなく順調に行くと思われますが、万が一の緊急事態の際は機長の指示に従ってくだい。緊急脱出が必要な際はお客さんご自身でドアを開けていただく必要があります。

また本日のフライトは海上を飛ぶ予定のため、救命胴衣をお渡しいたします。使い方について写真の通りです。

パイロットは管制官と通信を行いながら飛んでいます。特にヘリコプターが飛行場にいる間や離着陸を行っている間は、できるだけ会話を控えていただきますようご協力をお願いします。

フライト中に気分が悪くなった場合は我慢せずにすぐにパイロットにお知らせください。

着陸後についてですが、グラウンドスタッフがドアを開けるので、それまではシートベルトを着用したまま座って待っていてください。スタッフの指示に従い、ヘリコプターから離れるときも横もしくは前方から離れてください。

最後に何か聞いておきたいことや不安に思っていることはありますか?

それではフライト楽しんでくださいね!!

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