ヘリコプターを含めた航空機は大気の中を飛行するので、大気の状態によってさまざまな影響を受けます。
大気の状態は場所やその時々によって複雑な要素が絡み合い、刻々と変化しています。
そんな複雑で予測のつかない大気では何をするにも面倒なので標準化したものが、国際標準大気(ISA:International Standard Atmosphere)です。
この「ISA」は航空の分野では欠かすことのできないもので、航空機の性能の把握や航空気象においてかず多く出てきます。
今回はそんなISAについて解説します。
国際標準大気 ISA とは?
国際標準大気は英語で「International Standard Atmosphere」と言います。
長いので単に頭文字を取って「ISA」ということが多いです。
地球の大気の圧力、密度、温度、及び粘性が高度によってどのように変化するのかを表したモデルのこと。
地球の大気をとある状態に仮定して、その大気が高度の上昇降下によってどのように変わっていくのかを表したものです。
ISO(国際標準化機構)はISAを国際標準ISO 2533:1975 として発行しています。
航空の世界では、ICAO(国際民間航空機関)が1993年に「ICAO Standard Atmosphere」をDoc7488/3として発行しています。
両者に大きな違いはありませんが、ISOの標準大気は高度の範囲が32km(105,000ft)までなのに対して、ICAOの標準大気は高度の範囲が80km(262,500ft)までになっています。
平均海面での標準大気の初期値
標準大気は湿気や塵のない完全気体であると仮定しています。
標準大気は平均海面においては以下のような値になります。
■気圧:1013.25hPa=29.92inHg
■密度:1.225kg/m3
■温度:288.15K°(15℃=59℉)
■音速:340.294m/sec
■重力加速度:9.80665m/sec2
航空の分野では上記の値を覚えておけば問題ありません。
特に気圧と温度は絶対に覚えておきましょう。
標準大気の温度モデル
標準大気が高度によってどのような気温減率になるのかを見ていきましょう。
下の図は標準大気における気温の変化を表したものです。
緯度によって異なりますが、標準的な対流圏界面の高さは11,000m(36,089ft)です。
そして温度はこの対流圏界面(-56.5℃)まで-6.5℃/1000m(-1.98℃/1000ft)の割合で減少します。
航空の分野では1000ftで約2℃下がると覚えておくといいと思います。
図を見ると15℃から-56.5℃まで直線的に減少しています。
-56.5℃になる高度以上では成層圏に入り高度約20kmまでは温度は一定になります。
標準大気の気圧モデル
続いて気圧モデルを見ていきましょう。
以下の図は標準大気における気圧の変化を表したものです。
先ほどの温度のモデルと比べて変化は直線的ではありません。
高度による気圧の変化は非常に変わりやすいのでこのような線になっています。
しかし10,000ftまでの高度であれば直線的な気圧減率になります。
気圧の減少率は約 1inHg/1000ft(1hPa/30ft)です。10,000ft以下の地上付近であればこの数字に近い減少率が得られます。
標準大気と高度の関係
参考に標準大気と高度の関係がまとまった表を貼っておきます。