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ヘリコプターのウェイクタービュランス

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ウェイクタービュランスと聞くと、飛行機が発生させるものとイメージしがちですが、ヘリコプターにもウェイクタービュランスがあります。

飛行機やヘリコプターに関わらず、多くのパイロットはサイズの大きい飛行機のウェイクタービュランスには警戒心を持っています。しかしそれ以外の航空機に対してはどうでしょうか?

航空機の大きさに関係なくウェイクタービュランスは発生します。

ヘリコプターのような小さな航空機のウェイクタービュランスに対しては、警戒心が薄くなってしまいます。

実際にヘリコプターのウェイクタービュランスによって飛行機が墜落する事故が発生しています。

これは小型の飛行機がヘリコプターの後に続いて着陸するとき、ウェイクタービュランスに巻き込まれてコントロールを失いそのまま墜落しています。

この動画の事故だけではなく、ヘリコプターのウェイクタービュランスによる事故が数多く発生しています。

その主な要因はヘリコプターのウェイクタービュランスに対して正しい知識がなく、その危険性を認識できていないことにあると思います。

ヘリコプターのウェイクタービュランスは非常に強力であり、その影響について正しく理解しておく必要があります。

飛行機のパイロットもヘリコプターのパイロットも正しい知識を身につけ、このような事故を防止できるようにしていきましょう。

目次

ヘリコプターのウェイクタービュランスはどのようにつくられるのか?

ヘリコプターのウェイクタービュランスは飛行機のものと非常によく似ています。

似ているというか発生する根本的な要因は同じです。

メインローターの上面と下面での気圧差によって翼端付近では下面から上面へと巻き込むように空気の流れができます。これがヘリコプターの翼端渦です。

ホバリング中であればこの翼端渦は同じ場所で循環しています。

ヘリコプターが前進飛行中はこの渦はどんどんと後方に取り残されていき、飛行機の翼端から発生する翼端渦と同じようになります。

これがヘリコプターのウェイクタービュランスです。

これに巻き込まれると飛行機のそれと同じように、機体が急激にロールしコントロールを失って、最悪の場合墜落してしまいます。

ヘリコプターのウェイクタービュランスは飛行機よりも危険

同じ重量のヘリコプターと飛行機を比較した場合、発生させるウェイクタービュランスの強さはヘリコプターの方が大きいと言われています。

特に離着陸などの低速で飛行する場面では、多くのパワーを必要とするためウェイクタービュランスがさらに強くなります。

ヘリコプターに続いて離着陸を行う小さな飛行機は、大型飛行機が前にいると思って操作するべきです。

FAAが1996年に報告したヘリコプターのウェイクタービュランスに関する実験結果があります。

FAA Flight Test Investigation of Rotorcraft Wake Vortices in Forward Flight

この実験では重量が7600lb(3447kg)〜70000lb(31751kg)の範囲の4機のヘリコプター(S-76A,CH-53E,CH-47D,UH-60A)を使って、ウェイクタービュランスの強度や減衰特性などについて幾つかの試験を行っています。

この実験で得られた結果の中から、いくつか参考になりそうなものをご紹介します。

実験で得られた結果

①対気速度が40ktを超える場合、後流渦の強さは速度に反比例し重量に比例する。

②対気速度が40kt未満の場合、速度が遅くなるほど後流渦は減少し、ダウンウォッシュへと変化していく。

③前進側ブレードの渦は後退側ブレードの渦よりも半径が小さく強力で、より危険。

④後流渦は最大の最大持続時間は105秒。(S-76A)

⑤後流渦の最大到達距離は3.1nm。(CH-53E)

⑥機体重量が重く、ローター直径が大きく、ローターの枚数が多い機体ほど、より大きな直径の渦を発生させる。

⑦ヘリコプターの後流渦は飛行機とは違い一定に降下していかない。降下する時もあれば水平の時もあり、さらには上昇していく場合もある。

⑧ヘリコプターの後流渦に遭遇すると、飛行機の後流渦よりもはるかに大きなヨー運動が発生する。

より詳細に調べたい方は上記のリンクから該当ページに飛べるので読んでみてください。

ダウンウォッシュの影響範囲

ウェイクタービュランスではありませんが、ヘリコプターのダウンウォッシュがどのくらいの範囲まで影響するのか知っていますか?

先ほども言った通り、ヘリコプターのウェイクタービュランスやダウンウォッシュは機体が小さいが故に軽視されがちです。

しかしヘリコプターのダウンウォッシュは非常に強力で台風並みかそれ以上の風を産み出します。

特に小型の飛行機は影響を受けやすいので特に注意が必要です。

ローター直径の3倍以内の範囲には近づかない

一つの目安として一般的に言われているのは、「メインローター直径の3倍以内の範囲には近づかない」ということです。

メインローターの直径なんて知らないし考えたくもないという人のために、H125とH225のメインローター直径を参考までに紹介します。

H125:10.69m、H225:16.2mです。

メインローター直径の3倍なので、ざっくり30m〜50mの範囲内には近づかないようにしましょう。

しかし気象条件によってはメインローター直径の3倍以上の距離まで影響が及ぶ場合もあります。

ホバリング中のヘリコプターは「動くマイクロバースト」です。

ヘリコプターは見た目以上に危険な乗り物だと改めて認識させられますね。

ダウンウォッシュについてはこちらの記事でより詳しく解説しているので、読んでみてください。

参考

FAA Flight Test Investigation of Rotorcraft Wake Vortices in Forward Flight(PDF)

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