ドクターヘリが学校のグラウンドや河川敷、駐車場など空港やヘリポート以外の場所に着陸しているのを見ることがあると思います。
今回はドクターヘリがどうして空港やヘリポート以外の場所で離着陸できるのかを解説していきます。
本来は空港やヘリポート以外の場所には着陸できない
航空法では航空機は原則、空港やヘリポート以外の場所において離着陸することは禁止されています。
(離着陸の場所)
第七十九条
航空機(国土交通省令で定める航空機を除く。)は、陸上にあつては空港等以外の場所において、水上にあつては国土交通省令で定める場所において、離陸し、又は着陸してはならない。ただし、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
航空法
ここで言う国土交通省令で定める航空機とは、滑空機のことです。
アメリカなどの国ではヘリコプターや飛行機も、どこでも離着陸することができます。
羨ましいですよね。
ドクターヘリには特例が適用される
航空法第79条だけを見るとドクターヘリも離着陸できないことになってしまいますが、捜索又は救助のための特例が存在します。
(捜索又は救助のための特例)
第八十一条の二 前三条の規定は、国土交通省令で定める航空機が航空機の事故、海難その他の事故に際し捜索又は救助のために行なう航行については、適用しない。
(捜索又は救助のための特例)
第百七十六条 法第八十一条の二の国土交通省令で定める航空機は、次のとおりとする。
一 国土交通省、防衛省、警察庁、都道府県警察又は地方公共団体の消防機関の使用する航空機であつて捜索又は救助を任務とするもの
二 前号に掲げる機関の依頼又は通報により捜索又は救助を行なう航空機
三 救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法(平成十九年法律第百三号)第五条第一項に規定する病院の使用する救急医療用ヘリコプター(同法第二条に規定する救急医療用ヘリコプターをいう。)であつて救助を業務とするもの
航空法、航空法施行規則
前三条の規定というのは「離着陸の場所」「飛行の禁止区域」「最低安全高度」の3つです。
(離着陸の場所)
第七十九条 航空機(国土交通省令で定める航空機を除く。)は、陸上にあつては空港等以外の場所において、水上にあつては国土交通省令で定める場所において、離陸し、又は着陸してはならない。ただし、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
(飛行の禁止区域)
第八十条 航空機は、国土交通省令で定める航空機の飛行に関し危険を生ずるおそれがある区域の上空を飛行してはならない。但し、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
(最低安全高度)
第八十一条 航空機は、離陸又は着陸を行う場合を除いて、地上又は水上の人又は物件の安全及び航空機の安全を考慮して国土交通省令で定める高度以下の高度で飛行してはならない。但し、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
航空法
この「捜索又は救助のための特例」に該当するのは自衛隊や消防、警察などのヘリコプターで捜索活動や救助活動をするものやこれらの機関から依頼を受けて捜索救助を行うもの、そして救助の任務を行う救急医療用ヘリコプター(ドクターヘリ)に限られます。
従って自家用の操縦士が「これは捜索だから」と勝手に言って学校のグラウンドに着陸はできませんし、最低安全高度以下の飛行が許可されるわけではありません。
またドクターヘリであっても救助の任務でない時にはこの特例の対象外です。
救急医療用ヘリコプターとは?
航空法施行規則第176条3項に「救急医療用ヘリコプター」という言葉が出てきました。
もちろんこれはドクターヘリのことですが、ドクターヘリの定義について「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法」でみていきましょう。
この法律では救急医療用ヘリコプターを次のように定義しています。
第二条 この法律において「救急医療用ヘリコプター」とは、次の各号のいずれにも該当するヘリコプターをいう。
一 救急医療に必要な機器を装備し、及び医薬品を搭載していること。
二 救急医療に係る高度の医療を提供している病院の施設として、その敷地内その他の当該病院の医師が直ちに搭乗することのできる場所に配備されていること。
救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法
日本のドクターヘリは白に赤ラインが入っており、機体には「Doctor-Heli」の文字が入っています。
外見はドクターヘリですが機内に医療機器や医薬品が装備されていなければ、それはドクターヘリとは呼べないということですね。